軽量化・小型化が加速する現代のものづくりにおいて、部品の材質はより軽いものが選ばれるようになってきました。
アルミや樹脂といった軽量素材は、設計の自由度を高める一方で、「ねじのゆるみ」や「めねじの破損」といった新たな課題を引き起こします。
こういった課題の対策として有効なのが 「インサート」。
本コラムでは、代表的なインサートである「ワイヤーインサート(コイルタイプ)」にフォーカスし、特徴や選定のポイントをわかりやすく解説していきます。
そもそもインサートとは
インサートとは、めねじの補強・補修を目的とした部品です。
「ねじインサート」と呼ばれることもあります。
アルミや樹脂(プラスチック)などの軟質材は機械的強度が低く、めねじがつぶれやすいという欠点があります。
インサートを使用すれば、母材の材質を変えることなくめねじの強度を高めることができます。
また、すでに損傷してしまっためねじの修復にも効果的です。
元のねじサイズのまま補修できるため、設計変更や部品の再製作を避けることができます。
損傷しためねじを廃棄せずそのまま使用できるため、環境も配慮した部品です。(材料廃棄の削減)
インサートは、主に次の3タイプに分類されます。
■コイルタイプ(ワイヤーインサート):インサート用に立てためねじに挿入
■セルフタップタイプ:下穴に自らねじを切りながら挿入
■圧入タイプ:打ち込むことで固定
この中の「コイルタイプ(ワイヤーインサート)」について詳しく解説していきます。
ワイヤーインサート(コイルタイプ)の特徴
ワイヤーインサートは、コイルタイプのインサートの一種で、「ヘリサート」などの商品名で広く知られています。
ステンレスなどの金属ワイヤーをらせん状に巻いた構造をしています。
あらかじめ開けた下穴に専用工具でタップを立て、ワイヤーインサートを挿入することで、めねじの補強・補修が可能です。
通常のねじ締結では、おねじとめねじのリードや角度の誤差により、接触率は60%以下になることがあります。
そのため、ねじ頭部に近い第1〜3山に負荷が集中しやすく、破損の原因となります。
ワイヤーインサートを挿入することで、リードや角度の誤差を吸収し、接触率を約90%まで向上させることができます。
これにより、ねじ山への荷重が分散され、疲労破壊のリスクが大幅に低減します。
ワイヤーインサートには挿入工具の溝にひっかけるための突起(タング)がついているものと、ついていないもの(タングレス)があります。
このタングは挿入後不要になるため、専用工具で折り取ります。
使用数量が多いと折り取り作業、折り取ったタングを拾う作業に時間がかかるため、タングレスの需要が高まってきています。
ワイヤーインサート メーカー比較
2025年現在、日本で流通しているワイヤーインサートのブランドは5つです。
各ブランドのラインアップを比較してみました。
サイズ・材質が豊富なワイヤーインサート「リコイル」
イケキンでは、「リコイル」ブランドのワイヤーインサートを取り扱っています。
「リコイル」は、ヘリサートと並ぶ代表的なワイヤーインサートブランドです。
日本総代理店として、販売面だけでなく技術面でもサポートしています。
「リコイル」の特長は、以下の通りです。
■サイズ展開が豊富(M2〜M135、インチサイズ対応)
■材質ラインアップが充実(SUS304、耐熱材、非磁性材、耐食性材など)
■タング付き・タングレス両方対応
■他メーカーに比べると自由外径が小さく挿入しやすい(※規格内)
■キットなどのラインアップが豊富
■特殊サイズ製造可能
作業効率を重視する方には、タングレスがおすすめです。
ピッチ飛びなどの挿入ミスの防止や作業時間の短縮に貢献します。
用途や仕様に応じて当社スタッフがご相談に対応いたします。
ヘリサートなどの他ブランドとの互換性や違いを踏まえた選定のポイントもお伝え出来ます。
お気軽にお問い合わせください。
まとめ
めねじの強度確保と補修において、ワイヤーインサートは非常に有効な製品です。
特に軽量・軟質な素材を使用する製品設計においては、その効果を実感しやすいでしょう。
中でも「リコイル」はサイズ・材質の豊富さ、使いやすさに優れており、幅広いニーズに対応可能です。
ねじの信頼性を高めるパートナーとして、ぜひ「リコイル」の導入をご検討ください。
また、リコイルの比較表をご用意しております。
サイズラインアップ以外に、材質の比較や採用実績などが一覧になっておりますので是非ご活用ください。
皆様のお役に立てますと幸いです。