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技術コラム

その締結は本当に計算通りか? ─ トルク・軸力試験で“見える安心設計”

2025.09.10
イケキンおすすめ

イケキンでは十数年前よりねじの選定やトラブル解決のための「試験サービス」を実施しています。
現在、トルク試験、トルク軸力試験、NAS式振動試験、超音波ボルト軸力測定の4つの試験をご用意しております。
これまで、電子機器、車載装置、半導体製造装置、鉄道車両、工作機械、樹脂成型機など、様々な業界の技術者から相談を受けてきました。
このコラムでは、お客様から寄せられた課題の中でも特に多かった「新しい締結方法の検討」「ゆるみ止め剤の性能の変化の確認」「理論値と実測値の差異の検証」について、試験の必要性と重要性を解説していきます。

新しい締結方法の検討

小ねじ→タッピンねじへの変更時、タッピンねじの種類の変更時などに実施していただく必要がある試験です。
量産時のトラブルを未然に防ぐには、部材に適したねじの選定、最適な下穴径、適正な締付トルクを事前に決定しておくことが不可欠です。
過去の経験や実績のみに頼って条件を決定してしまうと、量産時に不具合が発生し余計なコストや時間がかかってしまうリスクがあります。
こうした問題を防ぐためには、締付破壊試験でエビデンスを取得しておくことが大切です。

必要な試験:締付破壊試験

タッピンねじによる締結を適切に行うためには、以下の3つの要素を適切に設定する必要があります。
1.ねじの種類
2.下穴径
3.締め付けトルク
この3つの条件を正しく設定するために「締付破壊試験」が重要な役割を果たします。

【実際の試験工程】
第1段階:締付破壊試験(※)
検討中のタッピンねじと下穴部材、被締結材を用意します。
下穴部材は3〜5種類の異なる下穴径のものを準備します。
それぞれの条件でn10破壊試験を実施し、F/D比(締付破壊トルク比)良好な下穴を最適条件とします。

(※)締付破壊試験では、タッピンねじが下穴にねじ込むトルクTD点と下穴やタッピンねじが破壊されるTF点を確認します。
TD点とTF点がいかに離れているかが重要なポイントで、この値が大きいほど安全な設計ができていることになります。
この指標のことをF/D比(締付破壊トルク比)と呼びます。
F/D比は3.00 以上(被締結部材が樹脂の場合は3.50)が目安です。
タッピンねじの締付破壊試験のサンプルデータは以下よりダウンロードしていただけます。

第2段階:軸力測定(必要に応じて実施)
最適な条件で実際に締め付けを行い、発生する軸力を測定します。

第3段階:実部品での検証
量産に用いる実際の部材を使い、同様に締付破壊試験を実施。
得られた結果が問題ないことを確認できれば、量産準備完了です。

第4段階:戻し試験or増し締め試験(必要に応じて実施)
環境試験(ヒートサイクル試験、振動試験など)後に実施します。
製品に負荷を加えた際、締結部にどのような影響があるのかを確認します。

ゆるみ止め剤の性能の変化の確認

ゆるみ止め剤を変更すると締付け性(※)、ゆるめトルク(接着剤が破壊されるトルク)が変化する可能性があるため、エビデンスを取得する必要があります。

(※)塗布されている接着剤の抵抗(ねじ込み性)と締付け時のトルクと軸力の関係

必要な試験:トルク軸力試験、戻し試験

【実際の試験工程】
第1段階:トルク・軸力試験
使用装置:PCトルクアナライザー、ロードセル
試験部材:従来のゆるみ止め剤を塗布したねじ、新規採用予定のゆるみ止め剤を塗布したねじ、軸力試験用ワーク(被締結部材およびめねじ部材)

この構成により、従来と同じ締付けトルクで問題ないか、あるいはトルクの変更が必要かを評価することができます。

第2段階:戻しトルク試験
使用装置:PCトルクアナライザー

第1段階の試験結果に基づき締付け試験を行い、接着剤が固着した状態でゆるめトルク(戻しトルク)を計測します。
その際、新旧のゆるみ止め剤の性能に差異がないかを確認します。

理論値と実測値の差異の検証

材質や表面処理、ねじ形状(頭部形状や座面積など)が変わると摩擦係数が変化します。
摩擦係数が変化すると以前と同じ締付トルクでは設計通りの軸力が得られず、締結不足または過大締結のリスクが生じます。
そういったリスクを避け、安全な締結を実現するためにも試験での検証が必要です。
※洗浄工程の追加などの際も同様です。

必要な試験:トルク軸力試験

【実際の試験工程】
1.実際の組立に使用する材質で、被締結部材・めねじ部材のテストピースを作成します。
2.想定される軸力を基準に、停止トルクを設定してトルク軸力試験を実施します。

試験を実施したお客様の声

イケキンでは試験を通してお客様と一緒に検証・議論し、解決策を見つけ出すお手伝いをさせていただいています。
試験サービスをご利用いただいたお客様からは、「実際のトルクと軸力の関係性が明確になり、工具や締め付け条件の選定に説得力が持てた」とご評価いただいております。
こうした成果は、イケキンが長年培ってきた知識と試験に関する知見によって支えられています。
そのため、一度試験をご利用いただいたお客様からは、別サイズや材質への追加検証のご相談も継続的にいただいています。

まとめ

設計者は、製品が正しく機能し、ねじがゆるまないようにするに必要な軸力を算出します。
しかし、製造現場で軸力を直接管理しながら締付けを行うことは、実際にはほとんど不可能です。
そのため、現場ではトルク管理によって品質を確保する必要があり、設計意図を確実に反映させるために実証試験を実施し、その裏付けを得ます。
このように、製造現場において正しくトルク管理を適用することで、安全かつ安心な製品を出荷することができます。

イケキンはねじのエキスパートとして培った知見と測定環境を活かし、設計・開発の現場をサポートいたします。
ねじ締結に関するお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
また、イケキンのセミナーでは本コラムの内容をよりわかりやすく説明しています。
ご興味がございましたらぜひご検討ください。

曖昧な内容でも遠慮なくご相談ください!
じっくりお話をお伺いし、解決方法をご提案いたします

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