こんにちはー、りびぃです。
普段はFA(ファクトリー・オートメーション)の業界で設計の仕事をしている現役のエンジニアです。
機械の設計をする際には、その機械に求められる要件・機能などを考えながら部品選定、部品設計をしていきます。
このような設計業務の中では、ときには部品や材質について、
- メーカ間で部品を比較したり、
- 部品や材質についてメーカに問い合わせをしたり、
- その部品を発注するための部品表を作ったり、
などをしていきます。
ところがその部品や材質の名前を扱う際、てっきり正式名称だと思っていたものが実は特定のメーカの商標だったなんていうことはよくあります。
特に若手エンジニアの方で、先輩から教わった名称や社内で普段使われている言葉をそのまま使用し続けてしまい、後になって商標だったと知って驚くケースが少なくありません。
例えばメーカに部品について問い合わせをしたら「そのような商品は当社では取り扱っておりません」と回答されて、「いやいや、でも御社のカタログに記載されてるんですけど!」ということを経験したというのはエンジニアではあるあるです笑。
ということで本記事では、製造業で特によく使われる部品に絞って、実は商標だった意外な部品名・材質名を紹介していきます。
中には「商標登録の方で呼ばないと相手に通じないことが多い」ものもありますが、そのあたり臨機応変に対応できるようにしておきましょう。
ケーブルベア
ケーブルベアは、可動部分に敷設されたケーブルやエアホースを保護するための部品です。
FA業界で自動機を設計する際には高確率で使用し、
- ボールねじを使った機構
- 電動シリンダを使った機構
- エアシリンダを使った機構
など多くの場面で採用されます。

ですが実はこの「ケーブルベア」という名前は、実は椿本チエイン社の登録商標です。
正式名称は「ケーブルキャリア」などと呼ばれています。
ちなみにケーブルキャリアの製造メーカとしては、
- 椿本チエイン
- イグス
- ミスミ
- 日本ピスコ
などが代表的です。
LMガイド
LMガイドとは直動機構において荷重や外力を受けつつ、高精度な動作を実現させるための部品です。
自動機ではもちろん、場合によっては半自動機やジグのような規模でも活躍する、非常に汎用性の高い部品です。

しかし実は「LMガイド」という名前はTHK社の登録商標です(LMはリニアモーション、Linear Motionの略です)。
正式名称は「リニアガイド」になります。
ちなみにリニアガイドの製造メーカとしては、
- THK
- NSK
- イグス
- ミスミ
- ハイウィン
- 日本トムソン
などが代表的です。
パワーロック・メカロック
パワーロックやメカロックとは軸とハブを機械的に締結するための部品です。

軸とハブとの間にパワーロックを取り付けたあと、備え付けられているボルトを締め付けることで部品が径方向に突っ張るので、軸とハブとをしっかりと固定することができます。
軸やハブに追加工等をする必要がないため、軸ものの機構を設計する際にしばしば採用される部品です。
ですがこの部品について、パワーロックは椿本チエイン社の、メカロックはアイセル社の登録商標になります。
おそらく正式名称としては「キーレスブッシング」になります。
従来は軸とハブとの締結はキーを使うのが一般的だったこともあり、それに対して「キーが不要で使えるから」ということでキーレスブッシングになっているのだと思われます。
ただ名前が長いので正式名称で呼んでいる人は非常に少なく、私の経験上「メカロック」と呼んでいる人が大多数の印象です。
ちなみにキーレスブッシングの製造メーカとしては、
- 椿本チエイン
- アイセル
- ミスミ
- 三木プーリ
などが代表的です。
オイレス
オイレスは、回転機構、揺動機構、直動機構などさまざまな機構の軸受として機能する部品のことをいいます。

軸受は一般的に潤滑油やグリースを外部から供給あるいはベアリング内に封入する必要があるのですが、オイレスは「自己潤滑性」という特徴があり潤滑油やグリースを必要としません。
またボールベアリングと比べると耐荷重が高いのも特徴です。
しかし「オイレス」という名前は、 オイレス工業社の登録商標になります。
正式名称は「滑り軸受」といいますが、「ドライブッシュ」「無給油ブッシュ」などと呼ばれることのほうが多い印象です。
すべり軸受の製造メーカとしては、
- オイレス工業
- ミスミ
- 大同メタル工業
- イグス
などが代表的です。
カプラ
カプラとはエア配管や油圧配管において迅速な接続・切り離しを可能にする継手です。

高圧の配管でもワンタッチで「カチャン」と取付け・取外しができるので、よくあるねじで固定するタイプの継手と比較すると非常に便利という特徴があります。
しかし実は「カプラ」という名前は日東工器社の登録商標になります。
正式名称は正確にはわからなかったのですが「クイックカップリング」や「プラグ・ソケット」と呼ばれているのを聞いたことがあります。
ですがほとんどの方が「カプラ」と呼んでいる印象があります。
ちなみに配管のクイックカップリングの製造メーカとしては、
- 日東工器
- 日本ピスコ
などが代表的です。
シーケンサ
シーケンサとはざっくりいうと産業用のCPUのことを言います。

産業機械における「脳みそ」の役割をしており、センサやボタンの入力信号を取り込んだり、CPU内部で演算をしたり、モータやランプなどへ出力信号を出したりなど、自動機では欠かせない制御装置となっています。
多くの場合制御盤の中に配置されるので、普段現場で業務をしている人の中でも実物を実際に見たことあるという人は少ない印象です
しかし実は「シーケンサ」というのは三菱電機社の登録商標です。おそらくシーケンス制御から名前を取って「シーケンサ」と名付けられているのだと思われます。
なお正式名称はPLC(Programmable Logic Controller)と呼ばれています。
PLCの製造メーカとしては、
- 三菱電機
- キーエンス
- オムロン
- IDEC
- 横河電機
- ジェイテクト
などが代表的です。
インシュロック・タイラップ
インシュロック・タイラップは、配線や配管を施工する際にそれらを装置の部品に固定するために使われる部品です。

生産設備で配線や配管がうまく固定されていなかったり過剰に長さを余らせてしまっている状態でいると、設備を稼働させた際に配線・配管を引っ掛けてしまい、設備の故障や断線などの不具合を発生させてしまうことがあります。
そのようなことにならないために、ある程度の間隔で配線や配管を固定するのです。
インシュロック・タイラップ以外にも配線や配管を固定できる部品はいくつかありますが、取付けにねじの施工が不要で、かつ使い方を工夫することで柔軟な固定に対応できることから、FA業界では非常によく使われます。
また他にも、
- 線番を刻印したマークチューブを配線へ取り付ける
- 信号線のノイズを防ぐために、マジックチューブを配線へ巻き付ける
といった際にもよく使われます。
ですが実は、「インシュロック」はヘラマンタイトン社の、「タイラップ」はトーマス・アンド・ベッツ社(現在はABB社)の登録商標です。
ところで正式名称についてですが、これには非常に多彩な呼び名があり、
- 結束バンド
- ケーブルタイ
- 配線バンド
- タイバンド
など、人によって呼び方が異なります。
ナイロン
ナイロンという材料の名前は、製造業に従事していない方でも一度は聞いたことがあると思います。
ナイロンは樹脂の一つであり、
- 軽量化したい部品
- 強度をあえて低くしたい部品
- 金属材料が使えない部品
などにより採用されることが多いです。

しかし実は「ナイロン」という材質名は、米デュポン社の商標で、正式名称は「ポリアミド(PA)」といいます。
ですがナイロンという名前があまりにも浸透しているので正式名称で呼ばれることはほとんどありません。
ナイロンの中でも更にいくつか種類がありますが、FA業界では
- ナイロン6
- ナイロン66
- MCナイロン
がよく使われています。
ジュラコン
ジュラコンとは耐摩耗性に優れた樹脂の材質ひとつです。

例えば、
- ベルトやチェーンのガイド
- ワークの置台(ジグ)
など、摩耗が発生しやすいような箇所に採用することによって、装置や部品のメンテナンス頻度を下げることができます。
しかし実は「ジュラコン」という名前はポリプラスチックス社の登録商標になります。
正式名称はポリオキシメチレン(POM, Polyoxymethylene)ですが、多くの方は「ポム」と呼んでいます。
またポリアセタールというのもこの材質の正式名称です。
テフロン
テフロンも日用品でよく耳にする樹脂の一種です。
特にフライパンで「テフロン加工」という言葉を聞いた方は多いと思いますが、テフロンは耐熱性、非粘着性という特徴があるため、テフロン加工されたフライパンは食材が焦げ付きにくいという特徴があります。

しかし実は「テフロン」という名前は、もともとはデュポン社の登録商標で、現在ではケマーズ社に移管されました。
正式名称はわからなかったですが、フッ素樹脂を加工したものの総称という説明がなされていることが多いです。
ただ近年、一部のフッ素樹脂については人体や環境へ悪影響を及ぼすことが指摘されており、規制が厳しくなっていっている傾向にあります。