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技術コラム

軽量化のカギ『プラスチックねじ』の強みと弱み

2023.04.03


昨今、各業界において「製品の軽量化」という課題が重要視されています。
ノートPCやタブレットなど持ち運ぶような電子機器などはもちろん、自動車や半導体装置、大きな機械なども製品が軽量化されることで、機械を動かす動力を抑えられたり、作業負担の軽減に繋がります。

ねじは各製品において比較的小さな部品ですが、「プラスチックねじ」、いわゆる樹脂のねじを採用することで更なる軽量化に繋がります。

しかしながら樹脂にはたくさんの種類があり、それぞれ強みや特徴が違います。
プラスチックねじに使用されている樹脂の種類はイケキンが現在取り扱っているもので14種類。
ねじ以外にも取り扱う部品がある中で、樹脂のことまで細かく覚えていられないという方も多いのではないでしょうか。

このコラムではそんな方のために、プラスチックねじに使われている樹脂の特徴を、強度、耐熱性、耐薬品性、コストの4つの観点からおすすめの種類をお伝えします。

強度が高いプラスチックねじが欲しいときは…

金属ねじと違いプラスチックねじには強度区分がなく、それぞれの機械的性質(引っ張り強さや曲げ強さなど)の数値を見て求められている条件に匹敵するものを選びます。
強度以外の条件も合わせて選ぶ必要があり一概にこれが良いとは言い難いのですが、その中でも特に強度が高い樹脂TOP3をご紹介いたします。

No.1 RENY(レニー)-ガラス繊維強化ポリアミドMXD6
ポリアミドMXD6(※1)をベースとし、ガラス繊維を50%配合することで強化されたエンジニアリングプラスチック(※2)です。
エンジニアリングプラスチックの中で最も高い強度・弾性率を有し耐油性や耐熱性にも優れることから、金属の代替材料として一般機械、精密機械部品、電子機器部品などに用いられています。

※1…メタキシリレンジアミン(MXDA)とアジピン酸から得られる結晶性の熱可塑性ポリマーのことです。機械的強度や弾性率が高く、吸水性が低いなどの特長を有しています。

※2…強度に優れ、耐熱性のような特定の機能を強化してあるプラスチックの一群を指す分類上の名称です。

No.2 PPS-ポリフェニレンサルファイド
結晶性のスーパーエンジニアリングプラスチック(※3)で、RENYの次に引張強度が高い樹脂です。
RENYと比べると少し強度は劣りますが耐薬品性や耐熱性にも優れており、化学機械部品などにも用いられています。

※3…耐熱性・機械的強度が非常に高い高機能樹脂のことです。

No.3 PEEK(ピーク)-ポリエーテルエーテルケートン
半結晶性の最高級性能を有するスーパーエンジニアリングプラスチックです。
3番目に引張強度が高いほか、優れた耐薬品性を持つ樹脂です。

なお、各種類ごとの機械的性質の数値表は下のボタンからダウンロードいただけます。

熱に強いプラスチックねじが欲しいときは…

金属ねじと比べると、プラスチックねじの耐熱性はそれほど高くありません。
例えば、一般的なステンレスねじ(SUS304)だと耐熱温度が約400℃ですが、プラスチックねじのほとんどは200℃以下です。
その中でも耐熱温度200℃を越えるものをピックアップしてご紹介します。

No.1 CERAMIC-セラミック(アルミナ96%)
一般的なセラミックスとして広く使用されており、連続使用温度は1,500℃です。
耐摩耗性、高硬度、寸法安定性を活かし、大型機器部品や精密機械部品に使用されています。
また、耐食性にも優れ高温中でもアウトガスがないので半導体装置内にも多く使用されています。
耐熱性はどの樹脂よりも群を抜いて良いですが、樹脂カテゴリの中では比較的重く、高価であることがデメリットです。

No.2 PFA-パーフルオロアルコキシアルカン
優れた化学的、電気的、機械的特性を示す熱可塑性フッ素樹脂で、連続使用温度は260℃です。
CERAMICよりも耐薬品性に優れるため、強活性の化学薬品に定常的に接触する半導体分野向けの部材に最適な材質です。

No.3 PPS-ポリフェニレンサルファイド
連続使用温度は200℃と上記2つと比較すると低いものの、軽さとコストにおいては優位性を示します。
強度や耐薬性も安定しており、バランスの良い材質です。

耐薬品性に優れるプラスチックねじが欲しいときは…

プラスチックねじの大きなメリットのひとつとして、金属ねじよりも耐薬品性が高いことが挙げられます。
中でもトップクラスの耐薬品性を誇る樹脂を2つご紹介します。

No.1 PEEK(ピーク)-ポリエーテルエーテルケートン
エンジニアリングプラスチックの中でも最高レベルの耐薬品性を示します。
ただし、濃硫酸のみPEEKを溶解できてしまうので注意が必要です。
後述するPTFEに比べると比較的安価で、強度が高く軽いことが特徴です。
耐熱性、耐摩耗性、難燃性、対加水分解性にも優れ、半導体装置、OA機器、自動車、ICウエハキャリアなどに用いられています。

No.2 PTFE-四フッ化エチレン樹脂
フッ素樹脂の代表的な樹脂で、前述のPEEKよりも高い耐薬品性を持ちます。
ほとんどの化学薬品・溶剤に対して不活性で、優れた電気的特性、非粘着性、潤滑性をあわせ持ちます。
化学、電気、機械、宇宙開発などの分野での使用が可能です。

他にも耐薬品性に優れると言えるものはありますが、極めて良いとされるのは上記の2種類です。
使用する薬品の種類と使用環境(温度など)を鑑みて選ぶ際にお役に立てる、室温(23℃)でのテストデータをご用意しましたので、ぜひご活用ください。

なるべくコストを抑えられるプラスチックねじが欲しいときは…

プラスチックねじは基本的には金属ねじよりも高価です。
その中でも比較的低コストのものをご紹介します。

No.1 PC-ポリカーボネート
非結晶性のエンジニアリングプラスチックです。
抜群の耐衝撃性を有し、機械的特性や電気的特性をバランスよく備えています。
透明で自己消化性を示すことから、電気・電子、自動車、医療などの幅広い分野で用いられています。

No.2 POM-ポリアセタール
結晶性のエンジニアリングプラスチックです。
機械的性質のバランスがとれており、優れた耐疲労性、耐クリープ性、摩耗摩擦特性を備えています。
金属の代替材料として電気、自動車、各種機械、建材などの分野で広く用いられています。

No.3 PA-ポリアミド(ナイロン)
結晶性のエンジニアリングプラスチックです。
強靭な材料で摩擦係数が小さく、耐摩耗性、自己潤滑性に優れています。
耐油性、耐薬品性も良いため機械材料に最適ですが、吸湿性が高いので設計上配慮しなければならないという問題点もあります。

まとめ ~樹脂にはそれぞれ強み、弱みがある~

ここまでご紹介してきた通り、樹種にはそれぞれに強みと弱みがあります。
プラスチックねじを選定する際は用途や求める性能と優先する条件を明確にし、それに見合った樹脂を選択することが重要です。
今回は4つの観点で樹種の種類と特徴をご紹介しましたが、まだ紹介しきれていない樹脂もいくつかあります。
イケキンで取り扱いのある14種類の樹脂の材質概要と、物性一覧、耐薬品性一覧、機械的材質をまとめた資料をご用意いたしました。
金属ねじからプラスチックねじへの切り替えをご検討の際や、製品の条件に見合った樹脂が分からない際などにご活用いただけますと幸いです。

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