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技術コラム

ねじの基礎≪9≫ ねじの材料

2025.08.27
ねじの基礎

ねじを使う際、用途に応じて適切な「種類」「材料」「サイズ」を選定する必要があります。
中でも、ねじの「材料」は非常に重要な要素なので、今回はこれを詳しく解説していきましょう。

1. ねじに使われる鉄鋼材料

ねじの素材(成分)は大きく鉄鋼材料と非鉄材料に分けられます。
鉄鋼材料とは、鉄の「5元素」と呼ばれる炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)を必要に応じて鉄に添加した材料の総称です。
まずは、鉄の5元素について簡単に説明しましょう。

炭素(C)
鉄鋼の強度・硬さを大きく左右する主要元素で、鋼には 0.22〜2.06% の炭素が含まれています。炭素含有量が増えるほど硬さや引張強さは向上しますが、延性や靭性は低下します。
鋼は炭素の含有量やその結晶構造によってオーステナイト、パーライト、マルテンサイトなどに変化するため、炭素は添加元素の中でも最も重要な役割を担っています。
(オーステナイトなどの金属組織については、「技術コラム ねじの基礎≪8≫ 焼き入れ・焼き戻しとは?ねじの熱処理」を参照してください。)

ケイ素(Si)
シリコンや半導体の材料として知られている元素で、鉄に添加することで強度・硬さ・耐熱性を向上させます。
しかしながら、その効果は炭素に比べて小さく、およそ1/10程度です。

ケイ素は脱酸剤としても利用されるため、不純物の除去に役立ち鋼の品質向上にも寄与します。

マンガン(Mn)
乾電池や肥料などに使われる元素で、鉄に添加すると炭素との結合を強くして強度・靭性・耐摩耗性を高めます。
製鋼時には脱酸・脱硫して不純物を除去する働きがあるので、製品の品質を安定させる重要な元素です。

リン(P)
こちらも肥料によく使われる元素で、ごくわずかな量を添加することで強度・耐食性を高められます。
一方で延性や靭性を低下させて低温環境で脆くなる(低温脆性)傾向があるため、通常は極低濃度に抑えられています。

硫黄(S)
硫黄は温泉の独特な香りや成分の一つとして知られており、鉄に添加すればマンガンと結合し硫化マンガンを生成することで切削加工性を向上させます。
一方で、靭性や疲労強度を低下させるため、用途に応じて慎重に添加されます。

炭素鋼

強度や加工性のバランスが良い炭素鋼は、ねじをはじめとして多くの産業分野の基本的な材料として利用されています。
炭素鋼は安価で強度に優れているものの、酸化しやすく錆による腐食が発生しやすいといった特徴があります。
ここではねじに使われる代表的な炭素鋼について説明しましょう。

SS材(一般構造用圧延鋼材)
「SS」は Steel Structure の略で、その後に続く数字は引っ張り強さを表します。
例えば、SS400 は一般構造用圧延鋼材の中で引張強さが 400MPa 程度の規格を満たす材料となります。
炭素含有量は極めて低く、溶接性に優れて延性・靭性が高いのが特徴で、建築、橋梁、船舶、車両などの構造材として広く使用されています。
強度とコストのバランスが良いため汎用性の高い材料として一般に使われており、ねじ関連では座金やボルトのほか、アイボルトやアイナットなどに用いられます。

S-C材(機械構造用炭素鋼鋼材)
強度・加工性・コストのバランスが良いため、産業機械や自動車部品など幅広く使用されます。
SとCの間に入る数字は炭素含有量で、例えばS45Cだと炭素含有量は 0.45%となります。
炭素量が多く、焼入れ・焼戻しなどの熱処理で高い強度・硬さを得られます。
成分規格が明確で加工性と溶接性のバランスが良く、ボルトやナット、平行ピンなどなどのねじ部品に幅広く使われます。

SWC材(冷間圧造用炭素鋼線)
炭素量0.35%以上の高炭素鋼をベースとした鋼で、高い硬さと耐摩耗性を持つのが特徴です。
焼き入れ・焼戻しで強度を向上できるので、強度区分8.8以上のねじにも使えます。
ねじ部品としては、ボルトやナット、小ネジやタッピングねじなど幅広く使われています。

SP材(熱間圧延鋼板)
熱間圧延によって製造される鋼板で、強度と靭性のバランスに優れています。
ねじ部品としては、平座金に使われることが多いです。

SK材(炭素工具鋼鋼材)
高い硬さと耐摩耗性を持つ炭素工具鋼で、刃物や金型に使われます。
ねじではスプリングピンや皿バネに使われることが多く、タップやダイスなどの工具材としても利用され、高精度で耐久性の高い加工を支えています。

合金鋼

合金鋼とは鉄の5元素に加えて他の元素を添加したもので、添加元素の種類と量によって性能が大きく変化します。
以下に合金鋼に添加する一般的な元素を示します。

クロム(Cr):耐食性・耐熱性・耐摩耗性を向上させる
モリブデン(Mo):焼き入れ性・強度を向上させる
ニッケル(Ni):耐熱性や高温化・低温化における強度を向上させる
銅(Cu):塑性加工性を向上させる
ホウ素(B):焼き入れ性を向上させる
このほか、タングステン(W) やコバルト(Co)などを添加することもあります。ここでは、ねじに使われる合金鋼のうち、代表的なものを説明しましょう。

SUS材(ステンレス鋼)
鉄の5元素に加えてクロム(Cr)を10.5%以上含有した鋼をステンレスと呼びます。
添加されたクロムが酸素(O)と結合して鋼の表面に酸化被膜(不動態皮膜)が形成されるため、錆を防げます。
この酸化皮膜により優れた耐食性を持つため、屋外部品、水回り、医療・食品機器などに使われています。
以下にねじに使われる主なステンレス鋼の種類とその特徴を示します。

SCM材(クロムモリブデン鋼)
鉄の5元素に加えてクロム(Cr)とモリブデン(Mo)を添加した構造用合金鋼で、高強度・高靭性・耐摩耗性・耐熱性に優れます。
焼入れ・焼戻しによってさらに高い強度を得られるため、自動車や産業機械の高負荷部品、航空機部品などに多く使われます。
ねじ用途ではボルト・シャフト・ピンなど高応力がかかる部位で使用され、特に強度区分「9」クラスの高強度ボルトに採用されることが多い材料です。

ねじ用の鉄鋼材料は、強度・靭性・耐摩耗性・加工性・コストなど、複数の要素を総合的に考慮して選定する必要があります。
例えば、炭素鋼は安価で加工しやすく種類も豊富ですが、耐食性に乏しく錆びやすいという欠点があります。
一方で、合金鋼は添加される元素の種類や量が増えるためコストは高くなりますが、耐食性や耐熱性を向上させることができます。
これらの特性を総合的に判断し、使用環境や要求される性能に応じて最適な材料を選ぶことが非常に重要です。

 

 

2. ねじに使われる非鉄金属

ここでは、ねじに使われる非鉄金属(鉄鋼材料以外の金属)について代表的なものを紹介しましょう。

真鍮
真鍮とは銅と亜鉛の合金で、特に亜鉛の含有量が約20%以上のものを指します。
「黄銅」や「ブラス」とも呼ばれ、耐食性が高い・弾性に優れており音を響かせやすい・柔らかいとため複雑な形状や薄い板状にも成形しやすい、といった特性から楽器や5円玉などに使われています。
電気伝導性が高いという特徴もあり、電気部品の端子止めや電子機器の固定用など等電動性を要するボルトや耐食性を要する製品に用いられています。

アルミニウム
アルミニウムの比重は約2.7で、鉄の約3分の1という軽さを持つために軽量化が求められる製品に適した材料です。
純アルミは強度が低いため、一般にはマグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)などを添加したアルミニウム合金が使われます。
ねじでは、5000系合金や6000系合金が使われることが多いです。

5000系合金(例:A5052)
マグネシウムを主成分に含み、耐食性に優れ、成形加工性がいいといった特徴があります。
耐食性を活かした屋外機器や電子機器のねじ、また軽量化が求められる小ねじやタッピングねじに適しています。

6000系合金(例:A6061)
主にマグネシウム(Mg)とシリコン(Si)を添加した合金で、耐食性と加工性に優れているのが特徴です。
高い強度と耐食性を持ち、強度が求められるねじ部品に使われます。
アルミ合金は軽量で腐食に強く、表面に硬質アルマイト処理を施すことで耐摩耗性や硬度を高められるといった特徴があります。

亜鉛合金
亜鉛合金には銅やアルミニウム、マグネシウムが少量添加されています。
鋳造性に優れるため、複雑な形状のねじ部品や小型の機械部品に使われます。
耐食性は真鍮ほど高くありませんが量産に適しているためコストが低く、自動車部品や家電製品の固定用のねじとしても使われています。

3. 特殊用途に使われる材料

ここでは、特殊用途向けのねじに使われる材料について説明しましょう。

ジュラルミン(7000系アルミ合金)
ジュラルミンはアルミニウムに銅やマグネシウムを添加した熱処理硬化系合金で、非常に高い強度と軽さを兼ね備えています。
一方で加工が難しく製造コストが高くなるため、航空機や自動車といった強度と軽量化が求められる分野や、精密機械用の高強度ねじといった特殊用途で重宝されています。

樹脂(プラスチック)
樹脂製ねじは耐食性が高く電気絶縁性にも優れるため、電子機器や医療機器、化学装置などで利用されます。
軽量で加工しやすい反面、強度や耐熱性は金属に劣るため、使用環境に応じて選定が必要です。
樹脂ねじについて詳しくは、「樹脂ねじとは?メリット・デメリットから具体的な用途・事例まで解説」、「樹脂ねじの特性とは?短所をカバーする製品も紹介!」を参考にしてください。

チタン
チタンは高い強度と優れた耐食性を持ち、特に海水中では白金に匹敵するほどの耐食性を発揮します。そのため、強い耐食性が求められる海洋構造物や医療用インプラント、航空宇宙分野で使われます。
比重も4.51で鉄(7.85)に比べて軽量なものの加工コストが高く、特殊用途に限定して使用されています。

4. まとめ

今回はねじの材料の中でも素材に注目し、詳しく解説しました。
ここで紹介した材料以外にも、ねじの素材(成分)は多岐にわたります。
ねじの材料選定は奥が深く、「結局どれを選べばよいかわからない」「特殊な用途なので、対応する材料があるのか不安」といったお悩みも多いのではないでしょうか。
イケキンでは、ねじの専門知識を持つエキスパートが技術的なご相談に対応しています。
材料の選定や締結方法についても、用途に応じた最適なご提案を丁寧に行っておりますので、お困りの際はぜひお気軽にご相談ください。

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