1.部品点数はなぜ増える?
ねじ締結は、ボルト・小ねじなどのおねじ部品のみで事足りればいいのですが、締結環境によっては、ナットなどのめねじ部品や、座金などの関連部品が必要になってくる場合があります。
代表的なものとして、相手材が薄く、めねじを立てることが難しい場合にはナット、母材が軟らかい場合や表面を塗装している場合にはボルト・小ねじの座面が相手材に陥没しないように座金を使う、などです。
ここで問題になるのが、ナットや座金の組み込み作業や、ねじ締めの際にナットや座金の脱落(落下)です。
ワークの概要
機械の外装に取り付ける鋼板製のパネルを六角穴付きボタンボルトで固定していますが、パネルには塗装が施されており、面圧緩和のため、締付け前に平座金を組み込んでいます。
面圧とは、ボルト頭部の面積あたりにかかる荷重のことで、これが相手材の耐力を上回ると相手材の変形や陥没が起きます。
その他の締結条件は以下の通りです。
ねじサイズ:M6×12、M6×15、M6×20
本数:50~100本/台
作業されている方との会話では以下のようなお困りごとを聞きました。
・平座金の組み込み作業時間がかかる
・ねじ締めの際に平座金が頻繁に脱落する
・平座金の組み込みを忘れることがある
2.部品点数の削減方法
どうやら、締付け前に組み込む平座金の存在が作業効率を下げていたり、作業ミスを誘発したりしているようです。
平座金そのものが悪いと言っているわけではなく、部品の選定方法に改善の余地がある、ということです。
どのように改善するのかというと、
①座金組み込みボルトに変更する
②座金一体化のボルトに変更する
③接着剤で座金を固定する
といったものがあります。
今回のお困りごとは前述のとおり「作業時間」「平座金の脱落」「平座金」の入れ忘れです。
③は接着作業が発生し作業時間がむしろ増えるため論外です。
①は有効に思えますが、市販性を考えると不利になります。
今回使用するボタンボルトにおいては、イケキンが把握する限り平座金のみを組み込んだボルトは市販されていません。
もちろん特注で製作することは可能ですが、リードタイムが長くなります。
となると残るは②ですが、座金と一体化したボルトは市販されています。
もちろん、イケキンでも取り扱っています。
いわゆる「フランジ付き」もしくは「つば付き」、正式には「六角穴付きフランジボタンボルト」です。
ただし、JIS規格品ではありません。
これなら、締付け作業時に座金の脱落や入れ忘れをすることはないですし、部品点数の削減にもなります。
3.現行と比較する方法
六角穴付きフランジボタンボルトのフランジ径は、JIS規格の平座金の外径に近いサイズですが、同じではないので、締付けた際の相手材への面圧、発生する軸力を確認する必要があります。
面圧の影響については、締付けた後、相手材が変形や陥没が発生していないかの確認が一般的です。
では、発生する軸力に差が出るのかは実際の測定が必要です。
軸力測定の例として、トルク軸力試験があります。
ワッシャ型圧力センサを締結物と被締結物の間に挿入して軸力を測定します。
これにより、従来のボタンボルト+平座金の組み合わせと、フランジボタンボルトの軸力ではどの程度の差が出るのかを比較します。