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技術コラム

光電センサのライトオン・ダークオンの使い分け方

2025.10.20
現役設計者の生の声

こんにちはー、りびぃです。

普段はFA(ファクトリー・オートメーション)の業界で機械・電気・制御設計の仕事をしています。

自動機を設計する中では多数のセンサが使われますが、その中でも特に使用頻度の多いセンサの一つが「光電センサ」です。

光電センサは光を照射する「投光部」と、光を受光する「受光部」に分かれており、光を受光したか、受光していないかによって信号を出力するセンサです。

ワークの有無、動作部の減速や停止のトリガ、オーバーランの検知など、様々な目的で採用されます。

ただし光電センサを使う上では、光電センサの動作モードについてしっかりと理解しておく必要があります。

その動作モードが「ライトオン(Light-on)」と「ダークオン(Dark-on)」です。

これはセンサがON信号を出力する条件についての設定であり、

  • ライトオン: 受光部で光を受光した際にON信号を出力する
  • ダークオン: 受光部で光を受光できなかった(遮光された)際にON信号を出力する

というものです。

最近の光電センサはセンサアンプによって動作モードを切り替えることができるため、機械設計者がセンサの型番選定をする際に特に動作モードを気にしないことが多かったり、そもそも「ライトオン・ダークオンという言葉自体知らない」という人も見かけるようになってきましたが、だからといって侮っていいものではありません。

なぜならこの動作モードの選択を誤ってしまうと、設備の安全性が確保できなくなってしまうリスクがあるからです。

本来は少なくとも電気図面に明記する必要があるのですが、私の経験上しばしば

  • 暗黙の了解みたいなことだからあえて指示書きをしていない
  • その辺は現場でうまく対応してほしい

ということがあったので、現場で困った・・・という経験をしたことがあります。

なので現場でいざというときには自分で判断をして素早く対応できるよう、ちゃんと知識を身に着けておきたいところですよね。

    ということでこの記事では、光電センサのライトオン・ダークオンの設定について、どのような考えに基づいて設定をすればよいのかについて、事例を交えながらわかりやすく解説をしていきます。

    なお、この記事は光電センサについて理解していることを前提にしているため、光電センサについての知見が少ない方はまずは以下の記事の内容を理解してから本記事をご覧いただくことを推奨いたします。

    知っておくべき光電センサの種類・特徴と選定のポイント

    キーポイントは「センサの用途」と「光電センサの種類」

    ライトオン・ダークオンの使い分けにおいてキーワードとなるのは「センサの用途」と「光電センサの種類」です。

    まずはセンサの用途についてです。

    光電センサの用途を挙げるとピンキリではありますが、それらをカテゴライズすると主に

    • 装置や機器の「起動」させる際に使用する
    • 装置や機器の「停止」や「安全」に関する部分に使用する

    というように分けることができます。

    これを踏まえて次に考えるのは「光電センサの種類」です。

    光電センサには主に透過形・回帰反射形・拡散反射形の3つがありますが、どの種類のセンサを使っているかによってライトオン・ダークオンの設定は異なります。

    例えばFAでよく使われる透過形で考えてみますと、「検出対象をセンサが検知している状態」というのは「光が遮光されている状態」ということになります。

    もしこの透過形を「起動」の目的で使用する場合、遮光によってON信号を出力すればよいので、ダークオンを設定することになります。

    このように整理をすると、ライトオン・ダークオンの設定は以下の表のようになります。

    起動停止・安全
    透過形ダークオンライトオン
    回帰反射形ダークオンライトオン
    拡散反射形ライトオンダークオン

    安全の観点からも考えてみよう

    ライトオン・ダークオンの設定について先述のとおり述べましたが「この設定について安全の観点からするとどうなのか?」についても見ていきましょう。

    具体的に光電センサの安全について考えるときは「光電センサが故障したとき(信号線の断線など)にも設備の安全が確保されるか?」ということになります。

    まず「起動」で光電センサを使用する場合について考えてみます。

    起動のトリガが立つはずのタイミングで立たないとなると機械が停止したままの状態になります。

    確かに機械が停止したままだと不都合であることには変わりないのですが、それでも「想定外のタイミングで起動のトリガが立って、機械が暴走する」となるよりかは遥かに安全ですので、これは安全上も理にかなっていると言えます。

    続いて「停止・安全」で光電センサを使用する場合について考えてみます。

    この場合「ON信号が出力されている間だけ、機械を稼働させることができる」というようなインタロックとして使用することになります。

    逆にセンサの信号線の断線などによってON信号が出力できなくなると、インタロックの条件が成立しなくなることから機械を稼働させることができなくなります。

    ただし「正常・安全であることが確認できないから機械が停止している」という理由で機械が停止しているため、これも安全上理にかなっていると言えるでしょう。

    ちなみにライトカーテンなどのような安全機器も同様の仕様になっています。

    ライトオン・ダークオンの事例紹介

    ではここからは私の経験をもとに、よくある光電センサの事例を使って説明をしていきたいと思います。

    在荷確認

    センサの中でも「その場所にワークがあるかを確認する」という役割をするセンサのことを俗に在荷センサ・在籍センサなどと呼びます。

    よくあるのが「ワークの置台にワークがセットされたことを検知したら、機械がワークを取りに行ってほしい」というように、機械を動かすためのトリガとして使用するものです。

    これはつまり「起動」の目的での使用であると言えるため、ライトオン・ダークオンの設定は以下のようになります。

    透過形ダークオン
    回帰反射形ダークオン
    拡散反射形ライトオン

      安全上の観点からも、仮にセンサの信号線が断線されると「ずっと在荷が検知されない状態」つまり機械が次の動作に移行するためのトリガが立たず停止したままになりますから、センサ故障時も比較的安全であると言えるでしょう。

      ただし「在荷確認が正常に取れないと、機械や部品が大きく損傷したり、人に危害が及ぶ」という場合、たとえば「物体を検知していない状態がトリガとなって機械が動く場合」では目的が「停止・安全」となりますから、ライトオン・ダークオンの設定は逆にすることがあります。

      透過形ライトオン
      回帰反射形ライトオン
      拡散反射形ダークオン

      通過確認

      通過確認とは、例えば

      • ワークが通過したことを確認したら、前工程の装置を原点に移動させたい
      • センサのON/OFFを使ってワークの個数をカウントしたい

      というような場面でセンサを使用するというものです。

      これはつまり「起動」の目的での使用であると言えるため、ライトオン・ダークオンの設定は以下のようになります。

        透過形ダークオン
        回帰反射形ダークオン
        拡散反射形ライトオン

        ここで、仮にセンサの信号線が断線している場合について考えてみます。

        この場合ワークがセンサの前を通過してもON信号が出力されないので、前工程の装置が動作原点へ移動するトリガが立たないことになります。

        ただ機械が安全に停止している状態になるという意味では安全であると言えるでしょう。

        一方ワークの個数のカウントとして使用する場合ですが、センサが故障するとワークが目の前を通過してもカウントアップが発生しなくなります。

        そのためこのセンサ単体では「センサの故障に気づかないまま設備が稼働できてしまう」状況が生まれてしまい、

        • ワークの詰まりを検知できない
        • 生産情報とのデータ連携がうまくできなくなる

        などの不都合が生じます。

        それを防ぐためには、例えば前工程からの信号と併用するという使い方をします。

        例えば前工程の在荷確認のセンサと併用して「前工程の在荷がOFFになり、かつ通過確認の信号がONしたときに、次の動作のトリガを発生させる」というものです。

        前工程との距離が離れている場合には、タイマを使って通過確認信号がONするまでの猶予時間を設けるとよいでしょう。

        これによって「在荷がOFFになったにもかかわらず通過確認が取れない」という状況を異常として通知することで、先述の不都合を対策することができます。

        減速のトリガ

        減速のトリガ用で使うセンサというのは、よくコンベヤ搬送をする装置に使われることがあるものです。

        例えばワークをコンベヤで搬送しつつ特定の位置で停止をさせる際に、コンベヤの最高速から急停止をさせてしまうとワークが滑るなどして本来の停止位置から大きくズレてしまうことがあります。

        そこで停止位置のある程度手前に光電センサ等を設け、そのトリガを受けてコンベヤを減速させるといった使い方をします。

        ここで減速のトリガ用のセンサが仮に故障した状況を考えてみましょう。

        減速のトリガを立てることができない状況においてコンベヤが最高速度で駆動してしまうと、ほぼ確実にワークが停止位置からズレてしまうことになります。

        最悪の場合、装置全体の故障などの二次障害が発生することも考えられるので、減速のトリガ用のセンサが故障した場合はそもそも減速時の速度でしか駆動できないように制限をかけておきたいところです。

        となると、この場合の光電センサは「停止・安全」で使用していると言い換えることができます。

        そのためライトオン・ダークオンの設定は以下のようになります。

        透過形ライトオン
        回帰反射形ライトオン
        拡散反射形ダークオン

        停止位置

        これは、ワークや機構の駆動部をある特定の位置で停止させるために使用するセンサのことを言います。

        通称「停止センサ」などと呼ばれますが、中でも「ある機構を原点復帰させる目的で使用する停止センサ」のことを「原点センサ」と呼ぶことが多いです。

        この停止センサは「正常に機能していないと、ワークや機構の停止位置を検知できない。二次的な機械の故障にまで発展するリスクが高い」ものになりますので、「停止・安全」の目的で使用するものであると言えるでしょう。

        そのためライトオン・ダークオンの設定は以下のようになります。

        透過形ライトオン
        回帰反射形ライトオン
        拡散反射形ダークオン

        位置決めのズレ検知

        位置決めのズレ検知用のセンサは、よく「ワークをジグにセットする箇所」などで使用されることが多いです。

        例えば作業員の方が手でワークをジグへセットする際に、

        • ワークをセットする向きを間違える
        • セットするべきワークの機種を間違える
        • ジグとワークとの間にゴミが混入しており、ジグからワークが浮いてしまっている

        などのようにポカミスをしてしまうリスクがあります。

        ポカミスをしたまま機械が動いてしまうと、ワークを破損してしまったり、ワークが機械と干渉して部品を破損してしまうなどの被害が予想されますから、この場合の光電センサは「停止・安全」の目的で使用するものであると言えるでしょう。

        そのためライトオン・ダークオンの設定は以下のようになります。

        透過形ライトオン
        回帰反射形ライトオン
        拡散反射形ダークオン

        動作範囲のソフトリミット

        例えばボールねじ搬送の機構において「これ以上はストロークさせないよう、センサで監視をしたい」というような場面での使用例となります。

        ソフトリミットを超えて機械が動作できるような状況が生まれてしまうと、さらに別の部品の破損につながってしまったり、作業員の方の安全が脅かされる可能性が高くなります。

        そのため、この場合の光電センサは「停止・安全」の目的で使用するものであると言えるでしょう。

        そのためライトオン・ダークオンの設定は以下のようになります。

        透過形ライトオン
        回帰反射形ライトオン
        拡散反射形ダークオン

         

        筆者プロフィール

        りびぃ
        「ものづくりのススメ」サイト運営者

        2015年、大手設備メーカーの機械設計職に従事。2020年にベンチャーの設備メーカーで機械設計職に従事するとともに、同年から副業として機械設計のための学習ブログ「ものづくりのススメ」の運営をスタートさせる。2025年にメディア事業を目的として「合同会社MSラボ」設立。

        ⇒ 「ものづくりのススメ」はこちらからアクセスできます!

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