こんにちはー、りびぃです。
普段はFA(ファクトリ・オートメーション)業界で機械・電気・制御設計の仕事をしています。
電気設計では制御盤や、その中に収納される機器の選定・配置検討を行っていきますが、その中でも端子台は「地味ではあるけれど実は重要度が高い部品」というように位置づけされます。
といいますのも端子台は、あらゆる電気機器に関わりのある部品であり、各機器との配線接続をするための中継・分岐という役割があります。
ところがいざ端子台を選定しようとすると各メーカから膨大な種類の端子台が取り扱われておりますし、またお客さんや社内の意向や暗黙のルールなどにより使い分けがされていることがあるため、特に初心者の方はその違いがわからずに戸惑うことが多いのではないでしょうか?
特に最近は自動機の状態の見える化徹底や安全性向上のための機器追加などにより、配線や端子台の種類・数が増えてきている傾向にあります。
その上で限られたスペース内にいかにして端子台を配置するかや、現地での配線施工性を考えてどの位置に端子台を配置するべきかなどを考慮する必要があることから、なかなか侮れない部品でもあります。
そこで今回の記事では、FA業界で一般的に使用される端子台の種類や特徴を紹介しながら、読者の皆さんが端子台の使い分けができるよう解説をしていきます。
実際に私が現場で設備の立ち上げ作業をしている目線からでも述べておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
固定方式別の種類
ねじ式端子台
ねじ式端子台は、配線を端子台に固定する際にねじを締めることで固定するタイプの端子台です。
昔からよく使われている端子台で、
- ねじで固定するため、配線脱落のリスクが低いと認識されていること
- 何度も着脱ができるため、はんだ付けするよりも使い勝手がよい
- 特殊工具が不要であること
等のメリットが挙げられます。
ねじ式端子台には大きく分けると
- 丸端子、Y端子用
- 棒端子、ブレード端子用
が存在します。
まず丸端子、Y端子用タイプですが、こちらはあらかじめ配線に丸端子あるいはY端子を圧着させておき、その丸やYの部分を端子台のねじ部に通して端子台へ固定していきます。
ただし個人的な経験でいうと、この二者のうちではほとんどの場合丸端子が使われます。
というのもY端子は「端子台のねじが少しでも緩むと配線が抜けるリスクがあるため、わざわざこのタイプの端子台を採用するメリットが薄れる」という理由で、開発用途以外ではほとんど使われることがなくなってきているのです。
丸端子であれば、端子用のねじが多少緩んだ程度では配線が脱落することはありません(大きく緩むと脱落しますが)。
物理的には棒端子などをねじの頭のところに挟み込んで固定することも可能ですが、Y端子と同様の理由でこのような使い方をされることはほぼありません。
丸端子、Y端子用の中にも「セルフアップ式:端子用のねじを緩めるとねじを取り外すことができるタイプ」と「タッチダウン式:端子用のねじを緩めてもねじが脱落しないタイプ」とがあります。
個人的な経験でいうと現場ではセルフアップ式をよく見かけますが、盤内にねじを落とすリスクが高く施工がしにくいので(落としたねじは思わぬショートの原因になるので放置は厳禁)、タッチダウン式を採用することをおすすめします。
一方で丸端子、Y端子用タイプはデメリットとして、
- 配線一つ一つをねじで固定するため、施工の手間がかかる(設備によっては配線の数は数百本〜数千本にまで至ります)
- 配線一つあたり固定するのに必要なスペースが大きく、制御盤内スペースを圧迫しやすい
- 配線の着脱をするためには太めのドライバが必要になるため、ドライバのアクセス性を考慮して配置する必要がある
が挙げられることから、明確な意図がない限りはほかの端子台が好まれることが多いです。
個人的な経験でいうと主に、
- AC200VやAC100Vなどの交流配線用の端子台、およびブレーカ等の外部端子
- 可動部上に設置される端子台
- 振動による悪影響を受けやすい配線の端子台
としてよく使われる印象です。
なお配線の太さによってねじのサイズの目安が決められておりますので(多くの場合M3~M5が採用されます)、以下の表を参考にして選定するようにしましょう。
M3 | M3.5 | M4 | M5 | |
配線径 [sq] | 0.5, 0.75, 1.25 | 0.5, 0.75, 1.25, 2 | 0.5, 0.75, 1.25, 2, 3.5, 5.5 | 3.5, 5.5, 8, 14 |
配線径 [AWG] | 20, 18, 16 | 20, 18, 16, 14 | 20, 18, 16, 14 | 12, 10, 8, 6 |
続いて棒端子、ブレード端子用タイプですが、こちらはあらかじめ棒端子あるいはブレード端子を配線に圧着させて使用します。
そして端子の配線穴に棒やブレードの部分を差し込んだら、ねじを締めて棒やブレード部を挟み込ませるようにして固定するものです。
丸端子および丸端子対応の端子台と比較して省スペース化が図れるというメリットがありますが、一方でねじが少しでも緩むと配線が脱落するリスクがあるというデメリットもあります。
しかし現在では施工の容易さの観点で、後述するプッシュイン式を採用するケースのほうが多く、設計者自らがわざわざ棒端子、ブレード端子用の端子台を選定することはほとんどありません。
あるとすれば、いくつかの制御機器・コントローラの配線接続部では棒端子、ブレード端子用のタイプが採用されていたりするので、その際に目にかかることがある程度です。
ちなみに棒端子とフェルール端子は一見すると形状が似ていますが、両者は似て非なるもので、圧着の方法や圧着工具が異なります。
プッシュイン
プッシュイン端子台とはその名の通り、配線を端子台へ固定する際に配線用の穴に押し込むだけで施工ができる端子台です。
端子台に配線を押し込んだ際に内蔵されているスプリングの作用によって配線がロックされるという仕組みになっております。
従来のねじ式端子台とは異なり、
- スピーディかつ簡単に施工ができる
- 本体が非常にコンパクト
- 配線穴が正面にあるので、配線ダクトとの隙間が狭くても着脱しやすく、マークチューブの文字も確認しやすい
- 細めのマイナスドライバがあれば配線の取外しができるので、工具アクセスのスペースをさほど必要としない
というメリットがあることから、多くの箇所で採用されている端子台です。
特に最近の生産設備は、
- 見える化を強化するためにセンサを増やす、ブレーカ等の補助接点をPLCの入力としていれる
- 安全性向上のために、リレーやセンサを二重化する
というニーズが増えてきていることから、半自動機程度の設備ですら多くの配線・端子台を必要とするケースも増えてきています。
これに伴い盤内のスペースがより圧迫されやすくなってきていることから、積極的にプッシュイン端子台を採用する事が多いです。
施工の際は配線の被覆をむいたあとに専用の圧着工具を使って「フェルール端子」という部品を圧着する必要があります。
ですがプッシュイン端子台の普及により「必要工具・部品を持っているのは当たり前」という感覚になってきているので、工具箱の中に忍ばせているエンジニアは多いです。
似たような端子台で、配線取付時にもマイナスドライバが必要な「スプリング式」というものもあり、こちらもしばしば実案件で採用されている端子台です。
最近は各電気機器メーカから、交流回路に対応したものやブレーカの外部端子にプッシュイン式が採用されているものが発売されてきています。
こういった用途においては、日本の現場レベルではまだまだねじ式が主流ですが、徐々にプッシュイン式に置き換わっていくという流れになるのではないかと思います。
プッシュインは配線脱落のリスクがあるという認識が普及はしているものの、一部ではねじ式もねじが次第に緩んでくることから、リスク自体はさほど変わらないという意見もあるためです。
またフェルール端子の圧着が不要で、裸のより線のまま使用可能な端子台も販売されておりますが、こちらも現場レベルではまだまだ採用事例が少ないのが現状です。
機能別の種類
端子台
汎用的に使用可能な端子台です。
この端子台には、いくつかの列がブロックとしてまとまった「固定形」と、端子の列がバラになっている「連結形」の2種類があります。
バラになっているタイプは端子の数が足りなくなってもあとから容易に追加できることから、設備の拡張性を考慮する場合によく採用されます。
ただしこのタイプを採用する際には多くの場合、端子台本体の他にもエンドプレートなどの付帯部品も合わせて選定する必要があるため、メーカカタログをしっかり呼んでおくようにします。
一方ブロック形状の端子台は、そのままDINレールや盤の中板にねじ止めできるため、組立配線作業がとてもラクです。
ただし端子の数が足りなくなった際に拡張させることができないため、一次配線の受入れ部などのように配線の数がほぼ決まっているような場所に採用されることが多いです。
なお端子台の中でもアース線用として専用に設けているものは「アース端子台」と呼ばれています。
インターフェース端子台
インターフェース端子台とは主に入出力機器(センサ、ボタン、ランプ、リレーなど)と、ネットワークや制御機器とを接続するための端子台のことを言います。
別名、コネクタ端子台と呼ばれることもあります。
FA業界で最も使用されるインターフェース端子台といえば、PLCの入出力ユニットおよびリモートI/Oユニットと接続するタイプのものです。
昔は各入出力機器の配線をPLCの入出力ユニットへ直接配線をするタイプもありましたが、今ではほとんどの入出力ユニットがインターフェース端子台を使用することが前提となっております。
よく制御盤内に機器を配置する際に配線等の都合で、PLCユニットはおおよそ真ん中あたりに、端子台は最下部や底面に取付ける方が良い場面が多いのですが、入出力ユニットとインターフェース端子台というように分離されていることによって対応しやすいというメリットがあります。
インターフェース端子台の形状を見ると端子台の上部にコネクタが設けられており、専用のケーブルを使って入出力ユニットのコネクタへ接続をします。
配線を差し込む部分については、ねじ式・プッシュイン式の両方のラインナップがありますが、現場レベルでいうとプッシュイン式が採用されるケースが多いです。
ただし注意点として、入出力ユニットのメーカやシリーズによって独自のピンアサインをしているものがあり、それに対応するインターフェース端子台や専用ケーブルが異なりますので、選定時に必ず確認するようにします。
他にもインターフェース端子台には
- EthernetIPの配線に接続するためのタイプ
- CC-LInkの配線に接続するためのタイプ
など様々な種類があります。
コモン端子台
コモン端子台とは、一口でいうと「配線のタコ足電線のような機能」をもった端子台のことを言います。
複数設けられた配線用の穴は内部でつながっており(ショートしている)、プラス・マイナスの記号が同じ箇所であればどこに差し込んでも同じように機能させることができます。
そのため盤内の機器配置や配線作業を大幅に簡略化させることができます。
FA業界でよく使われるのは
- すべての配線穴が+24Vのもの
- すべての配線穴が0Vのもの
- 半分が+24V、もう半分が0Vのもの
の3種類で、装置の仕様や電気回路をみながらうまく配置していきます。
特にPLCの入出力ユニットやリモートI/Oユニットを使う場合、そのI/Oの数とほぼ同数のコモン配線が必要になるので、入出力ユニットやリモートI/Oを選定する際に合わせて選定すると覚えておくとよいでしょう。
配線のコツですが、確かに同じ極であればどこに配線を差し込んでも同じように機能はしますが、せっかくならI/Oの線番に対応するようにコモン端子台に配線するほうがI/Oチェックの作業性が向上します。
なお、一般的な端子台を複数並べたうえで渡り配線(ショートバー)を使えばコモン端子台として使用することも可能ですが、個人的には入出力ユニット用であればコモン端子台を使ったほうが作業性がよいと感じます。