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技術コラム

ファイバセンサの設計・配線の注意点【5選】

2025.06.24
現役設計者の生の声

こんにちはー、りびぃです。

普段はFA(ファクトリー・オートメーション)の業界で設計の仕事をしています。

設備を自動化させるうえで、機械にとっての「目」となるセンサ類は欠かせない存在です。

特に物体の有無を検知するために、光電センサなどが多用されるのですが、少々特殊な事情がある箇所に使われるものに「ファイバセンサ」というセンサがあります。

ファイバセンサとは「センサアンプ」と「センサヘッド」という機器が「光ファイバ」で接続されており、その光を使って物体の検知をするセンサです。

光ファイバはよく皆さんのご自宅のインターネット回線にも使われている素材です(〇〇光という名前がついたものは、だいたい光ファイバが使用されています)。

光ファイバを使うということは装置内に電線を通す必要がないため、例えば塗装装置などのように電気のスパークによって発火・爆発の危険があるような雰囲気中でも採用されやすいというメリットがあります。

また、センサヘッドが極小のものも多いので、狭小スペースにも配置しやすいという点も大きなメリットとなります。

しかしその一方で、いくつかのデメリットがあります。

それは「ものすごく繊細な取扱いが必要」ということです。

そのため、よく使われる光電センサと同じような感覚で設計をしてしまうと現場でトラブルが続出する事態になりかねません。

実際私もファイバセンサの配線作業を経験したことがありますが、

「これは機械設計でちゃんと設計しておかないと収集つかないな・・・」

となりましたし、現場の職人さんたちも一部発狂していました。笑

また、現場での組立・配線をする際にも、その繊細な取り扱いが必要であるということからしばしばトラブルが起こったりもします。

そこで今回はファイバセンサの使用を検討している機械設計者や、これから組立・配線をする作業者の皆さんに向けて、どのような箇所を設計で注意するべきかについて詳しく解説をしていきます。

注意点1:曲げRは大きくとること

まず1つ目は曲げRは大きくとることです。

と言いますのも、光ファイバは

  • 信号線等の電線に比べると、ほとんど線のしなやかさがない
  • 急激な曲げ部があると光が減衰しやすい
  • 簡単にポキポキ折れる

といった特徴があるためです。

メーカーカタログで許容曲げRの部分を見ると「普通の電線ケーブルと変わらないぐらいかな?」と思いがちですが、実際ものに触れた感覚としてはその3~5倍以上は見ておいた方がいいと感じます。

電線の場合には「配線屋さんが現場を見ながらいい感じに合わせてくれるでしょー」という設計の人は多いと思いますが、

  • 電線のように余長を束状にまとめることが難しかったり
  • 電線に抱かせるようにしてインシュロックで縛るとファイバに下手な力がかかってしまったり

ということが起こります。

そのため光ファイバは設計段階できっちり配線ルートを検討しておくのをおすすめします。

また、動作する機構上にセンサを設置する際には

  • ケーブルキャリアの曲げRは、大きめのものを選定する
  • 動作範囲中において、光ファイバに無理な力がかからないようしっかりと確認する

ということを心がけるようにしましょう。

注意点2:コネクタ中継は基本やらない

光ファイバからアンプまでの距離が遠いと、もともとのファイバセンサの定尺ではアンプまで届かないことがあります。

そのようなとき、専用の光ファイバコネクタを使うことで、光ファイバを延長して接続することができます。

ですが、コネクタによる光ファイバの延長は基本やらないことを推奨します。

一番の理由は、投光・受光の経路内に中継コネクタが1個でも入ると、ファイバアンプへ帰ってくる光の量が大きく減少してしまう要因になるからです。

具体的にいうと、

  • ファイバの接続部でちょっとでも中心がズレていると光が減衰
  • ファイバの接続部がちょっとでも隙間が開いていると光が減衰
  • コネクタとファイバがちょっとでも緩いと光が減衰
  • きつく締めすぎるとファイバの断面がつぶれて光が減衰
  • コネクタの中にゴミなどが混入すると光が減衰

などのようなことが起こります。

実際施工してみると、その難易度が高いことがよくわかります。

もちろんアンプの設定変更により、受光感度を上げれば検出させやすくすることもできます。

が、感度を上げると逆にノイズ(周辺部品の拡散反射の光や、照明・太陽光など)を拾いやすくなるため、受光感度の設定にも限度があります。

ですから基本的にはコネクタ中継をせず、センサヘッドとアンプとを直接つなぐよう部品選定したり、センサヘッドとアンプの位置が近くなるように設計検討するなどの工夫が必要です。

注意点3:ファイバの端面はとにかくきれいに

光ファイバの配線施工をする際、光ファイバの端面はとにかくきれいにすることを心がけてください。

具体的な部分について1つずつ説明すると、

まず1つ目は「光ファイバの端面は不用意に触らない」ようにします。

もし不用意に触ってしまうと、手汗や指紋の付着によって光の伝送が妨げられ、投光量・受光量が減少してしまうからです。

もちろん触れていなかったとしても、埃や汚れが付着するのもNGです。

もし端面に汚れが付着した場合には、ファイバの端面付近を少しカットするのが無難でしょう。

続いて2つ目は「光ファイバのカットは専用カッタを使用する」ことです。

普通、電線をカットする際にはニッパを使用しますが、光ファイバのカットにはニッパは使用しない方が良いです。

といいますのも、光ファイバは「いかに配線に対して垂直にきれいにカットできるかで、投光量・受光量が減少しにくくなる」ものだからです。

ニッパを使って切ると、どんなに気をつけてまっすぐ切ろうとしても、どうしてもわずかに斜めになってしまうことが多くなります。

断面が斜めになってしまうと、光がうまく伝送できなくなってしまいます。

一方で光ファイバの専用カッタを使用することで、ニッパの使用に比べるとまっすぐな断面でカットしやすくなります。

3つ目は「専用カッタの穴は、基本は複数回使用しない」ことです。

よくある専用カッタは以下の図のように複数の穴があいており、その穴に光ファイバを通して刃を入れることでカットすることができます。

その際、一度でもカットに使用した穴はその後は二度と使わないというのが正しい使い方です。

といいますのも光ファイバは硬い素材でできているため、光ファイバを一度でもカットするだけでその部分が刃こぼれしてしまいます。

刃こぼれしたカッタでファイバセンサをカットすると「カットする」というよりは「押しつぶす」ような加工になってしまうため、

  • 断面がフラットにならなくなり、光が減衰しやすくなる。
  • 光ファイバが割れてしまう

という不具合が生じます。

目安として、切れ味の悪いカッターで光ファイバを切断すると「パチンッ」という軽い音が鳴ります(逆に、ちょっと鈍いぐらいの音のときは断面がきれいに切れています)

このことを踏まえると、例えば専用カッターに穴が8個あいていれば、光ファイバのカットに使用できるのは最大8回となります。

光ファイバのカットに失敗するのが不安な方は、専用カットを多めに準備しておくとよいでしょう。

また光ファイバをコネクタで中継している場合、きれいに断面をカットしなければならない箇所が多くなるので、施工難易度が高くなってしまいます。

そのような意味でも、可能な限り光ファイバをコネクタによる延長するような施工は避けるべきだと言えます。

注意点4:アンプの挿し口との相性

光ファイバをアンプの穴に接続する場合に注意が必要すべきことがあります。

それは「光ファイバとそのアンプの個体の相性によっては、光ファイバがうまく挿入できないことがある」という点です。

実際に相性の悪いアンプに対して光ファイバを挿入しようとすると、光ファイバの先端部が少しは入っていくものの、それ以上は光ファイバが入っていきません。

それでもなんとか入れようとすると、指が滑って光ファイバに曲げ応力がかかってしまい、最悪の場合光ファイバが折れてしまい、その破片がアンプから取り出すことができなくなってしまいます。

また仮にねじりながらなどして無理に入れ込んだ場合、見た目はうまく入っているようには見えますが、実は入れ込む際に光ファイバの端部がボロボロになり、光の投光量・受光量が大きく減少してしまいます。

試しに一度アンプから光ファイバを外してみると、どれだけボロボロになってしまっているかがよくわかります。

ですから相性が悪いなと感じた場合には、光ファイバとアンプとの個体の組み合わせを変えるなどの対応をすることが無難です。

どうしても光ファイバとアンプの組み合わせを変えることができない場合には、

  • 光ファイバ挿入時に指が滑らないよう、滑り止め付きの作業手袋をつける
  • 挿入時に光ファイバが穴に対してできるだけまっすぐになるよう、両手で光ファイバを若干張りながら挿入する
  • 少しでも斜めに力が加わったと感じたら、無理に挿入しない

などに注意をしながら配線をしてみてください。

注意点5:アンプの取付け

アンプの取付を検討する際に気をつけるべきことがあります。

それは「光ファイバの挿入口が天井以外の方向を向くようにする」ということです。

といいますのも、光ファイバの挿入口が天井を向いていると、その挿入口にゴミや異物が入り込みやすくなってしまうからです。

光ファイバの挿入口は狭いことが多いので、少しでもゴミなどが入ってしまうと、

  • アンプと光ファイバ間との光の伝送が悪化する
  • アンプに光ファイバが挿入できなくなる

などの悪影響が出てしまいます。

ですから設計でアンプの取付を設計する場合には、光ファイバの挿入口が天井以外の方向を向くように注意をしてください。

なお、光ファイバの挿入口が天井を向いていたとしてもその上方に邪魔板などを設置するという対策も有効ですが、その場合には、

  • 光ファイバの挿入作業がやりにくくならないようにする
  • 光ファイバの曲げRが小さくなりすぎないようにする

といったことに配慮しましょう。

注意点6:アンプの清掃

例えば光ファイバの挿入口に埃などが入り込んでしまいそれをきれいに除去したい場合、その作業には細心の注意が必要です。

といいますのも光ファイバの挿入口は非常に繊細な作りをしているためです。

仮に細い棒などを挿入口に突っ込んで清掃するなどすると、その作業によってむしろアンプの光学系が傷ついてしまい、修復不能になってしまう事があるためです。

また綿棒などを突っ込んでしまうと、その綿の一部が挿入部に残ってしまい、光伝送が悪化するリスクがあります。

もしどうしても挿入口の清掃をしたいのであれば、エアブローのように非接触で清掃する方法を採用するようにしましょう。

筆者プロフィール

りびぃ
「ものづくりのススメ」サイト運営者

2015年、大手設備メーカーの機械設計職に従事。2020年にベンチャーの設備メーカーで機械設計職に従事するとともに、同年から副業として機械設計のための学習ブログ「ものづくりのススメ」の運営をスタートさせる。2022年から機械設計会社で設計職を担当している。

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