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技術コラム

圧力センサの選定方法|現役エンジニアが教える用途別の選び方と注意点

2025.05.29
現役設計者の生の声

こんにちは、りびぃです。

私は普段、FA(ファクトリー・オートメーション)の業界で生産設備の設計をしている現役エンジニアです。

生産設備の中でも特に自動機を設計する際には、「何かを自動で判定するためのセンサ」が必須となるため、目的や状況に応じて適切なセンサを選定できることが設計者に求められます。

中でもFAの業界でよく採用されるセンサに「圧力センサ(または圧力スイッチ)」があります。

圧力センサとは「流体の圧力を測定しつつ、特定の圧力になった時に信号を出すことができる」センサです。

FA業界ではエアシリンダなどの空圧機器と一緒によく使われている印象です。

そんな圧力センサですが、実は圧力センサの必要性を理解している人が意外と少ないなと個人的に感じています。

「圧力を検知して、なんの意味があるの?」

という方、そこそこ多いのではないでしょうか。

「光電センサ」や「近接センサ」であれば「ワークや部品の有無を検知するため」のように用途がわかりやすいのですが、「圧力」ってなかなかイメージがわかないですよね。

しかし圧力センサをうまく使いこなしたり、適切に選定することができなければ、

  • 自動機で不良品が大量発生してしまう
  • 機械の運転中に大きな事故が発生してしまう
  • ポカミスが発生しやすくなり現場の生産性が低下する

などのような問題が引き起こされる可能性が高くなってしまいます。

そのような事態にならないためにも、機械を設計する立場としては圧力センサについて十分理解し、適切な圧力センサを選定できるようなスキルを身につけておきたいところですよね。

そこで今回の記事では、圧力センサについて詳しく解説しながら、選定時に知っておきたいポイントや注意点について、私の経験を踏まえてわかりやすくお伝えしていきます。

機械設計者の多くがあまり意識していない重要な機能などについても解説していますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

圧力センサとは

圧力センサとは、配管内の気体や液体などの圧力を検知し、それを電気信号に変換する部品のことを言います。

生産設備はその用途によって、

  • 空気圧
  • 油圧
  • その他ガス、薬品など

が扱われますが、それぞれに対応する圧力センサがラインナップされています。

圧力センサの中にもいくつか種類があるのですが、それぞれ検知することができる圧力の領域が違いなどのような特徴の差があります。

圧力センサは流体が使用されているところであればどこにでも使われる可能性がある部品ですので、産業機械はもちろん、自動車、航空・宇宙、医療機器、家電製品などさまざまな分野で広く使用されています。

圧力計との違いについて

「流体の圧力を測定できるもの」という意味では、似たようなものに圧力計があります。

おそらく圧力センサよりも圧力計の方が馴染みがあるという方も多い気がしますが、両者の違いについて説明します。

それらをまとめたのが以下の表です。

1つ目「圧力センサには信号出力がある」という点です。

あらかじめ圧力のしきい値を設定しておくことで、そのしきい値に基づいてセンサからPLC等へ信号出力をすることができます。

そしてPLCでうまくラダー回路をプログラミングすれば、しきい値に基づいて

  • アラームを出したり、
  • ランプを光らせたり、
  • 適切な動作タイミングを管理したり、

等といったことができます。

さらにはアナログ信号を出力することもできるため、例えば「遠隔に設置されたタッチパネル上で常に現在の圧力値を表示させたい」「運転中の圧力変動のデータを取得してグラフ化し、工程改善に役立てる」などのような使い方をすることもできます。

    ですから、自動化・DXを推進するような機械には非常に重要な要素です。

    2つ目は「高度な機能を利用することができる」という点です。

    機能の説明については後述しますが、圧力センサの中には用途に応じて、信号や電圧の出力方法を設定することができるのです。

    その一方で圧力センサにはこれらのような機能はありません。

    ただし、圧力センサの動作のためには給電が必要なので、電力が遮断されていると使用することができませんが、圧力計は給電が不要です。

    そのため、私の経験上ですと、圧力センサと圧力計の両方を採用するケースが多い印象です。

    圧力センサの使用例

    吸着パッドを使った装置の真空圧確認

    産業用ロボットを使った装置でよく見かけるのが、「マニピュレータとして吸着パッドを取り付け、ワークを吸着して特定の場所で搬送する」というように運用している自動機です。

    このような機械では、空圧回路の流路中に圧力センサを設置しておくことが効果的になります。

    吸着パッドを使ってワークを搬送するためには、吸着パッドをワークに押し当てた状態で真空を発生させることでワークを吸着する必要がありますが、

    この「吸着パッドを押し当ててから真空が十分に引かれるまで」には少々タイムラグが発生します。

    このタイムラグの数値を理論で正確に求めることは困難で、実際にはワークの形状などの様々な条件によって変化します。

    その際、

    • タイミングが早すぎると、真空が十分に引かれていないため、ワークを適切に搬送することができませんし、
    • タイミングが遅すぎると、ワークの処理スピード低下を招いてしまいますし、

    といった問題が起こります。

    そこで圧力センサを使って、十分な真空圧に到達した場合にPLCへ信号を出すことによって、適切なタイミングでワークの搬送動作に移行することができます。

    あるいは、仮に吸着パッドとワークとの間に隙間があるなどして真空圧が漏れてしまっている場合にも、圧力センサで空圧回路内の圧力を監視していれば、誤って真空圧に達していない状態でワークを搬送してしまうという現象を防ぐことができます。

    よくラダー回路では「◯秒以上経っても真空圧に到達しなければ異常判定し、ラインを止める」などのようなプログラムを組むことが多いです。

    特にワークがガラス板などの場合には、ワークを誤って落下させて破損させてしまうと、その工程にガラスの破片が飛び散ることになり非常に危険な状態になることがあります。

    そういった危険を発生させないという意味でも、圧力センサを使って搬送のタイミングを取ることが重要です。

    元圧確認

    元圧とは「供給元から送られてくる基本となる圧力」のことを言います。

    この元圧がそもそも正常に供給されているかを自動的に検出するのにも、圧力センサは有効です。

    というのも流体の配管で厄介な点が「パッと見ただけでは、配管内の圧力の状態がわからない」という特徴があるからです。

    そのため、

    • バルブを開け忘れており、流体が供給されていなかった
    • 配管やタンクが破損していて、流体が漏れていた

    ということがあっても、なかなか気づきにくいのです。

    そこで、レギュレータの近くに圧力センサを設け、特定の圧力の範囲に収まっている場合にPLCへ入力信号を送るようにすることで、

    • 圧力センサからの信号を受け取っている間のみ、設備を自動運転させることができる
    • 自動運転中に圧力センサからの信号が途切れた場合に、異常停止する

    といった運用をすることが可能になります。

    圧力センサの選定方法

    ではここからは、実際に圧力センサを選定する際の大まかな流れについて、わかりやすく解説をしていきます。

    1. 圧力検出したい流体に適合したシリーズを選定しよう

    まずは、圧力検出したい流体に適合した圧力センサのシリーズを選定していきます。

    圧力センサは大きく分けると「気体用」と「液体用」とにシリーズがわかれていることが多いです。

    というのも液体用では「耐腐食性」が圧力センサに求められる傾向にあるため、気体用などで使用されるシリーズの圧力センサでは故障するリスクがあるためです。

    ただ使用する流体が「蒸気」の場合には、流体自体は気体でも「液体用の圧力センサ」を選定する必要があるケースもあります。

    また、例えばガスタービン用途のような動作環境が高温の場合など常温以外で利用する場合には、それに適合した温度範囲の圧力センサを選定する必要があります。

    2. 使用圧力の範囲に適合したものを選定しよう

    続いては、使用する流体の使用圧力をどの程度の範囲なのかを確認していきます。

    市場に出回っている圧力センサはゲージ圧(大気圧を0kPaとする)で測定をするタイプが多い印象ですので、基本的にはゲージ圧で使用圧力を整理していきましょう。

    ここで圧力センサの選定に慣れていない方のために、いくつか選定事例をご紹介していきます。

    1つ目の例は「エアシリンダを使った装置の元圧確認」です。

    一般的なエアシリンダは0.4~0.5MPa程度で利用をするので、正圧用の圧力センサをレギュレータ〜ソレノイドバルブの間の流路内に設置します。

    こうして、ソレノイドバルブおよびエアシリンダを動作させるインタロックとして圧力センサの信号を使用します。

    2つ目は「液体用のタンク」に用いる場合です。

    液体は「液面高さが高くなるにつれて、タンク底付近の水圧が向上しやすい」という特徴があることから、圧力センサを使って間接的に液面レベルを測定することができます。

    この場合には正圧用の圧力センサを選定すればよいのですが、検知したい液体や液面のレベルによっては高い分解能を有する圧力センサの選定が必要になります。

    さらに別のケースとして、高粘度の液体を扱う場合には基本的に「正圧・負圧の両方が測定できるタイプ(連成計)」を選定するようにします。

    これは、タンク内へ液体を充填する場合に正圧を検知することが必要であることと、充填後に脱泡をするために負圧検知が必要であるからです。

    脱泡とは「液体中に含まれる気泡を除去する処理のこと」をいい、特に高粘度の液体を扱う際によく行われます。

    高粘度の普通にタンク内へ注いでしまうと、液体内に無数の気泡が発生してしまうことから、タンク内を真空引きをして気泡を除去するのです。

    3. 圧力センサに必要な機能を確認しよう

    圧力センサの中には、高度な機能が搭載されているものがあります。

    ここでは代表的なものについていくつか紹介します。

    1つ目は「ヒステリシスの設定」です。

    ここで言うヒステリシスとは「OFF→ONを出力する圧力値と、ON→OFFを出力する圧力値とに差をつける」というものです。

    例えば「0.4MPaになったらON信号をPLCへ入力させたい」とします。

    その際にOFF→ON、ON→OFFの両しきい値とも0.4MPaの設定になっている(ヒステリシスの設定がない)と不都合が生じる場合があります。

    というのも、0.4MPaを検知したあとにバルブの開閉などを行うと、圧力が0.38~0.4MPaの間で変動したりするのです。

    そのため、OFF→ONをした瞬間にON→OFFして、またOFF→ONをして、その後すぐON→OFFして・・・というような信号になってしまい、その後の処理を安定して動作させる事ができないのです(このような現象を「チャタリング」とか「チャタる」と言います)。

    一応PLCのプログラムを工夫すれば「OFF→ONをしたあとは圧力センサの信号を無視する」ということもできるのですが、そうすると「0.4MPaに到達したあとに流体が配管から漏れたりする異常を検知することができない」という不都合が生じます。

    そのためヒステリシスを使うことで、チャタリングを防止して安定した動作をさせつつ、流路内の異常検知を可能にすることができるのです。

    2つ目は「ピークホールド」です。

    ピークホールドとは、圧力センサで測定をしている時間中に記録された最大値(ピーク値)を保持し、表示または出力する機能のことをいいます。

    例えば「ゴムチューブの中にゴムチューブが破裂するまで圧縮空気を供給し続け、どこまでの圧力に耐えられたかを試験したい」などのような瞬間的な圧力を捉えたい場合、通常の設定では「取得される圧力の値が一瞬すぎてよくわからない」という事が起こります。

    このようなときにピークホールドの機能を使うことで、ゴムチューブが破裂したあとも試験中に記録した最大圧力を保持し続ける事ができるのです。

    もちろんPLC等からピークホールドの機能を切れば、通常通り圧力の値を取得するモードに戻すことができます。

    3つ目は「ウインドコンパレータ」です。

    例えば圧力センサを使った用途によっては「正常となる圧力の範囲を設定したい。圧力が高すぎても、低すぎてもNGにしたい」という場合があるかと思います。

    このようにしきい値となる圧力の範囲を設け、それによって信号出力が切り替わるようにしたい場合に使用するのがウインドコンパレータです。

    一般的にウインドコンパレータを設定するときは、正常となる下限値(LOW)と上限値(HIGH)を設定します。

    これによって、LOW〜HIGHの間に圧力が収まっている間だけONの信号を、それ以外の場合にはOFFの信号をPLCへ入力させる事ができるのです。

    このように圧力センサには様々な設定をすることができるので、生産設備をより高度に制御することができます。

    他にもさまざまな機能が搭載されている圧力センサもありますので、是非カタログやマニュアルを読んで見てください。

    ただしこのような機能を使う予定の場合には、PLCに接続するための入出力端子やA/D変換ユニットが必要になるため、電気・制御エンジニアの方への情報共有をすることが重要です。

    一方で「高度な機能は特に必要なく、PLC等へアナログ出力さえできればよい」という場合には、モニタは不要となります。

     

    筆者プロフィール

    りびぃ
    「ものづくりのススメ」サイト運営者

    2015年、大手設備メーカーの機械設計職に従事。2020年にベンチャーの設備メーカーで機械設計職に従事するとともに、同年から副業として機械設計のための学習ブログ「ものづくりのススメ」の運営をスタートさせる。2022年から機械設計会社で設計職を担当している。

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