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ねじの強化書(Vol.42) 熱処理のトラブルって何やねん!

2023.02.06
ねじの強化書

金属材料は加熱や冷却をする、またはそれらを繰り返すことで形状や寸法を変えることなく内部や表面の組織を変化させることで、硬さや強さなどの性質を変化させることが出来ます。
では、形状や寸法にまったく変化が無いかというとそうではなく、加熱の際に形状の変形や、体積が膨張することで寸法の変化などが生じることがあります。
そのため、熱処理においては変形や寸法変化、さらには割れ、脱炭素への対策が必要になります。
今回はネジ部品を熱処理する際に起こり得る問題と対応策についてお話します。

まずは、反りや曲がり、ねじれといった、いわゆる歪み(ひずみ)についてです。
歪みはネジ部品のサイズに関わらず発生するもので、特にネジ部や軸部が長いほど顕著になります。
歪みが生じたままではネジ部品としては使用できない場合があるので、熱処理後に修正をする必要があります。
どのような修正するかというと、プレス機などで歪みの凸部に大きな力を加える方法が一般的で、これを歪み矯正、またはコイニングといいます。
では、いかなる歪みも許容されないかというとそうではなく、これはJIS規格で基準があります。
これは、真直度、つまりどれぐらい真っ直ぐでなければならないかという基準で、ネジ部品の径や長さによって許容される範囲が変わります。

次に、寸法変化についてです。
熱処理の際には体積の膨張を伴い、求める寸法を確保できなくなるので、あらかじめ熱処理による寸法変化を見越してネジ部品を製作する必要があります。
膨張による寸法変化が生じてしまった場合は、熱処理後に研削や研磨をすることもありますが、熱処理後の硬さや形状によっては難易度が上がってしまいます。

次に、割れについてです。
急激な熱変化によって材料が持っている強度以上の応力が内部に生じて割れる場合と、膨張によって割れる場合があります。
歪みや膨張による寸法変化は後で歪み矯正や研削・研磨などで修正は可能ですが、割れに関しては製品として不合格になることが多いです。
ネジ部品の場合、ねじの首元や頭部の角面によくみられます。
そのため、割れが起きないための対策が必要になりますが、よくあるものとしては、角部を丸める加工(R面取り)にしたり、すでにR面取りしている場合は可能な限りR面取りの曲率半径を大きくするなどです。
では、割れが生じたものはどんなものでも許容されないかというとそうではなく、これもJIS規格で基準があります。
例えば、六角穴付きボルトの場合、頭部の外周と六角穴との距離の半分を超えない割れは許容されるとか、六角穴と頭部の縁がつながっているものは許容されない、といった基準があります。

最後に、脱炭素についてです。
金属を加熱する際に金属に含有する炭素(C)が酸素と結合し、その結果、炭素濃度が減少します。
この現象を脱炭(だったん)といいます。
脱炭が生じると、熱処理を施しても十分な硬さや強さが得られなくなり、ネジの強度不足につながりますし、割れの原因にもなります。
脱炭を防ぐには、熱処理の際に液化石油ガス(プロパンガス)を熱源に、熱処理炉内を炭素ガスで充満する方法が一般的です。

今回は以上です。
次回もお楽しみに!

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