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ねじの強化書(Vol.40) オーステナイト系ステンレスも硬くなるねん!

2022.12.12
ねじの強化書

表面熱処理は、浸炭焼入れや窒化のように硬化に至る元素を加熱することによって表面から染み込ませる方法と、高周波焼入れのように硬化させることが出来る素材の表面だけを加熱するというふたつの方法があります。
Vol.39では前者の浸炭焼入れについてお話ししましたが、今回は窒化(ちっか)についてお話しします。

【窒化】
鋼の表面に窒素(N)と鉄(Fe)との化合物である窒化鉄(FeN)を作って表面のみ硬くする熱処理で、ガスを利用するガス窒化と、塩浴炉(ソルトバスともいいます)を利用する塩浴窒化があります。

まず、ガスを利用する窒化は、製品が入った熱処理炉内にアンモニアガス(NH3)を充満させ、加熱することで表面に窒化鉄を生成させます。
通常のガス窒化は純窒化ともいい、ビッカース硬さ(硬さの単位のひとつで、この数値が高いほど硬い)では一般的にはHV700~千数百とかなりの硬さとなるため、目的としてはどちらかというと耐摩耗性の向上となります。
また、ガス軟窒化という炭素を同時に浸透させる方法もあり、ビッカース硬さでは一般的にはHV400~HV600と純窒化と比較して硬さは低いため、こちらの目的としてはどちらかというと耐疲労性の向上となります。

次に、塩浴炉を利用する窒化は、塩化ナトリウムやシアン塩酸などの塩浴剤(ソルト剤)が入った塩浴炉に製品を入れて加熱し、表面に窒化鉄を生成させます。
ガス窒化には純窒化と軟窒化があるのに対し、塩浴窒化は軟窒化のみで、低温、そして製品が大気に触れないため、表面は比較的きれいに仕上がります。
また、処理時間も短いので、コスト面でもメリットがあります。
ただ、使用する塩浴剤は文字通り塩分を含むので、乾燥が不十分だと錆びの原因になることもあります。
主な目的としては、耐摩耗性の向上となります。

ここまで窒化についてお話ししましたが、では規格品のネジや一般的なネジに窒化をしたものがあるのかというと、筆者の知る限りは無く、すべて特注のネジに対して施します。
では、ネジ部品において窒化を施して硬くするのはどんな場合かというと、筆者の経験上その多くが耐摩耗性や耐疲労性の向上によるネジの焼き付き対策となります。
そして、焼き付き対策が必要なネジ部品とは何かというと、Vol.27でお話ししたようにステンレス鋼製のねじ、特にオーステナイト系ステンレス鋼、ということになります。
硬くするだけなら焼入れでもよいではないか、と思われがちですが、オーステナイト系ステンレス鋼は性質上、焼入れによって硬くはなりません。
硬くするには、圧造や伸線(伸線ダイスという工具を利用して、素材を細くしながら伸ばす)といった塑性加工によって加工硬化させる方法があるのですが、出来上がったネジ部品をさらに塑性加工をすることはまずないので、硬くするにはその他の手段を選択する必要があります。
その他の手段のひとつが窒化なのですが、近年ステンレスのネジへの窒化処理の需要が増えているのはこういった理由によると考えられます。
もちろん、Vol.30でお話ししたように、焼き付き対策の際にオイルやグリースなどの潤滑剤やフッ素系コーティングなどの潤滑処理を行なえる箇所ならこれらを選択してもいいかと思いますが、使えない場合には窒化が有効な手段となります。

今回は以上です。
次回もお楽しみに!

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